燃料ガス産生微生物の探索
化学生命工学専攻 上田研究室
上田岳彦
- 十島村
活動の背景・目的
廃棄物を有効利用することと、燃料の生産を化石燃料資源に頼らないことがSDGsNo.7,13にとって必要です。そこで、廃棄物から燃料ガス(水素やメタン)を作り出せる有用な微生物を環境から発見して利用することを目指しました。そのような微生物は鹿児島県の火山島などの高温環境に生息していることが多く、十島村(トカラ列島)の小宝島から単離された微生物1)がコロナウイルスを検出するためのPCR反応に使う酵素試薬の開発のもととなった例2)もあります。
1) https://www.ritsumei.ac.jp/lifescience/skbiot/imanaka/T.kodakaraensis%20genome.html
2) https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/53/12/53_866/_pdf/-char/ja
活動の概要
トカラ列島の火山島にあるような極限環境中の微生物の中には、物質変換の過程で水素ガスやメタンガスなどの可燃性ガスを放出する微生物がいるため、それらの微生物を利用すれば、廃棄物や有用性の低い有機物などから、容易に燃料になるガスを生産することができるようになるに違いありません。そんな微生物を単離するため、ひとつひとつの微生物を個別に住まわせる小さなガラスの容器を作り、ガスを生産する能力がある微生物だけが、その容器の中で自身の作り出したガスの浮力のために容器ごと浮上してきて分離される、というしくみを作りました。この直径約0.05 mmの培養容器をその形からマイクロスフィアと呼び、これを用いた燃料ガスを生産するスーパー微生物を見つける方法をマイクロスフィア・スクリーニングと名付けました。廃棄物などを分解して燃料になるガスを産生する微生物をの探索を、鹿児島県内の島嶼地域を中心に続けています。
期待される効果
廃棄物からの燃料ガス産生により、CO2のゼロエミッションを実現できます。しかも燃料ガスの生産は場所や地域を選びません。生ごみ処理のコンポストのように、家庭や小規模事業者でも設置可能で、事業者ごとに廃棄物を分解して燃料化できるようになることが期待できます。