多職種連携高齢者コホート研究で都市改革 限界から健康長寿への挑戦 -垂水研究-
大学院医歯学総合研究科
先進治療科学専攻 心臓血管・高血圧内科学分野 大石 充・窪薗 琢郎
先進治療科学専攻 顎顔面疾患制御学分野 杉浦 剛
先進治療科学専攻 薬物動態制御学分野 武田 泰生
健康科学専攻 疫学・予防医学分野 郡山 千早
大学院医学部保健学科
理学療法学専攻 基礎理学療法学講座 牧迫 飛雄馬
作業療法学専攻 基礎作業療法学講座 田平 隆行
看護学専攻 地域包括看護学講座 宮田 昌明
法文学部 人文学科 心理学コース (生涯発達心理学) 安部 幸志
活動の背景・目的
鹿児島県垂水市は人口13,952人(2021年11月1日現在)、高齢化率43.1%。人口減少が止まらない限界集落ならぬ、“限界都市”である。日本全体でも高齢化が進んでおり、垂水市はその最先端を走っているとも考えられる。誰もが住みたくなるような街づくりを目指して、垂水市と鹿児島大学との間で「健康長寿・子育て支援の新しいモデルケースの構築」のひとつとして「垂水研究」を行うことが2016年に締結された。鹿児島大学の各専門分野研究室のほか、鹿児島県栄養士会や垂水市保健師にも声をかけて、多職種高齢者コホート研究(多様な専門家が参画して、市民の健康状態を長期的・継続的に調査して分析する)として計画。この事業の目的は、健康志向および社会活動性を向上させて、医療費・介護保険費および寝たきり・要介護者を減少させることにより、豊かで楽しい地方都市創成を実現させることである。
活動の概要
「垂水研究」は、垂水市が展開する「たるみず元気プロジェクト」のメインプロジェクトに位置づけられており、年1回の健康調査を2017年より実施している。調査項目は専門分野から1300項目以上に及ぶ。1日100人程度の健診を10数回に分けて行い、データはWifiを通じて鹿児島大学に設置された専用サーバーへ転送される。データは住民用健康手帳として印刷され、健診後3か月程度を目安に、異常値の考え方や改善法などの市民説明会が行われる。また、この全データは各部門責任者の2/3以上の賛成があれば解析可能となり、論文にも活用される。垂水研究は20年程度継続することで合意しており、久山町研究やFramingham研究と並ぶコホート研究に成長させたいと考えている。
期待される効果
垂水市の高齢者の医学的分析だけでなく、あらゆる側面から健康チェックをすることにより健康長寿に繋がることが期待される。また、高齢者が元気で長生きする都市づくりが実現すれば、住みやすい街として若い世代の定住も期待できると考えている。さらに垂水市は抗動脈硬化作用のある不飽和脂肪酸を多く含むブリ・カンパチの産地であり、抗酸化作用を有する飲用温泉水も多く生産されている。これらを活用した健康増進事業も展開したい。