奄美大島や県本土におけるコオロギ類の生物間相互作用の解明
理科教育講座動物学研究室
栗和田隆
活動の背景・目的
奄美大島は世界自然遺産に指定された生物多様性の豊かな地域です。そこでは目立たない小さな昆虫たちも生態系に重要な役割を果たしつつ生活しています。中でもコオロギ類はマニアが多いわけでもなく、一般の人にも注目されているわけではありません。しかし、コオロギ類は植物も動物も食べる雑食であり、また自身も多くの動物の餌になっています。このように食物連鎖の中心にいるような生物であり、生態系内での役割も無視できないと考えられます。しかし、コオロギ類の野外での生態は注目されてきませんでした。そこで、奄美大島やそれと対比する形で県本土のコオロギ類の生態を解明しています。
活動の概要
奄美大島ではネッタイオカメコオロギとタイワンエンマコオロギという2種のコオロギが同じ草むらに生息しています。実験室で飼育するとオカメはエンマとの競争に負けて数を減らしてしまいます。なぜ野外では共存できているのかを野外調査と室内実験で解明しています。また、自然度の高い海浜域にしか生息しない、体色が砂にそっくりなハマスズというコオロギの生態も解明しています。この種は他の種とは交尾行動が少し異なることなどがわかってきました。また、コオロギ類が何をどれだけ食べているのかは定量的な情報がありませんでした。現在は安定同位体解析という手法を用いて、コオロギ類の野外での食性も解明しています。
期待される効果
生態系内で重要な役割を担うと考えられるコオロギ類の生態や、人を含む他の生物との関わりを解明することで、生態系保全のための基礎情報を得ることができると考えています。また、今まであまり注目されてこなかった生物のため、意外な役割や生態を明らかにできるかもしれません。