廃棄物からの180°転換!ナイロン資源化への挑戦!!
理工学研究科・理学専攻・化学プログラム・生化学講座・加藤G
加藤 太一郎
活動の背景・目的
世界の市場規模が2020年に890万トンと推計されているナイロンは、強度、耐熱性、耐薬品性に優れるため繊維・プラスチックとして幅広く利用されている一方、丈夫すぎてリサイクルが困難なため使用後のポリマーの大半は焼却・廃棄処分されている現状がある。しかし原料の石油資源は将来的には枯渇し、また焼却は地球温暖化の要因となることから、今後は可能な限りリサイクルすると共に、バイオマス由来で生分解性を示す新規ナイロンの提案が急務である。このような背景のもと私たちは、現在は廃棄物とみなされているナイロンをリサイクルしたり、再資源化することを目指した研究活動を行っている。
活動の概要
私たちは、環境負荷を最小化する資源循環型社会の実現に向け、ナイロンを原料に戻して再利用するケミカルリサイクル手法の研究を行っている。私たちは、高分子量ナイロンに対して加水分解活性を示す独自の酵素ナイロンハイドロラーゼを保有しており、本酵素を利用して、温和な条件下にてアミド結合を加水分解し、ナイロンをモノマーにまで完全に加水分解する方法を確立している。また2020年度からはNEDOムーンショットプロジェクトに参加し、リサイクル性能を高めた次世代型ナイロンの開発にも携わっている。
期待される効果
温暖化を始めとする地球環境問題は、生態系への影響のみならず気候変動や自然災害をも誘発し、将来的には人類の存続にも影響を与える事が確実な状況である。よって多方面からのアプローチが試みられている。合成ポリマーの一角を占めるナイロンは、現実的なモノマーリサイクル手法が確立されておらず、その一部が環境中に漏れ出ることで深刻な海洋プラスチックごみ問題を引き起こしてもいる。本研究構想によって高効率にナイロンの再資源化を実現できる見込みが立てば、合成段階から再資源化を考慮した生産システムへの変換が可能となり、環境負荷を最小化する資源循環型社会の実現に一歩近づくことができる。消費者の行動変容を促し、20年後の人類の生活の豊かさに貢献する基盤技術となることが期待される。