窒素固定根粒の機能強化と植物の共生能力の開発
理工学研究科(理学系)理学専攻 生物学プログラム・生命機能講座 教授 内海俊樹
http://ris.kuas.kagoshima-u.ac.jp/html/100004759_ja.html https://sci-kagoshima-univ.jp/researcher/uchiumitoshiki/活動の背景・目的
人類は、石油と天然ガスを大量に消費して二酸化炭素を排出しながら窒素肥料を合成し、農・蓄産物を生産する。つまり、人類の「食」は石油に依存している。石油や天然ガスには限りがあり、このままでは食糧不足となる。これからの人類の「食と未来」を支えてくれるのは、植物と微生物の共生である。その仕組みを分子や遺伝子のレベルで理解して、窒素肥料をあまり必要としない生産性の高い農業システムの構築を目指す。
活動の概要
マメ科植物は根に「根粒」を形成し、その内部に根粒菌を住まわせる。根粒菌には窒素固定の働きがあり、大気中の窒素ガスから窒素化合物を合成して、植物に養分として供給する。植物ヘモグロビンの一酸化窒素制御機能を応用することで、窒素固定活性が高くて長持ちし、多雨期に根が冠水しても活性が落ちにくい根粒を着生するマメ科植物の作出に取り組んでいる。また、根粒菌と共生できるマメ科以外の農作物の開発も、国内の研究者と共同で進めている。
期待される効果
農作物の生産量と質の向上、窒素肥料の使用量の削減に結びつき、「持続可能な食糧生産の仕組み」の確立に貢献できる。窒素肥料の合成は、化石燃料の大量消費と膨大な二酸化炭素の排出を伴うので、低炭素社会の実現にも結びつく。